お口の衛生状態を保つことは、糖尿病や心筋梗塞、癌など多くの生活習慣病や疾患の予防に繋がると言われています。
しかし、お口が疾患と関係しているとは、あまりパっとイメージできません。
どのように影響しているのでしょうか?
人の身体には、体内に侵入してきた病原菌などの異物を排除する免疫という機能が備わっています。
怪我をして傷口から病原菌などが入り込んだ場合は、
この免疫機構が働き、体内への感染拡大を抑えつつ傷を修復します。
図1.体内へ侵入した病原菌に免疫機構が作用し、感染拡大を阻止しつつ傷口を修復するイメージ。
ヒトの身体には幾重も免疫機構が張り巡らされ、あらゆる病原菌=抗原に対処できるように、万全の体制が備えられている。
しかし、お口の病気に掛かった場合、体の免疫が追い付かなくなることがあります。
例えば、歯周病が進むと、歯周病に感染した歯の周辺の歯肉が弱り、常に出血したり、傷ついて出血しやすい状態になります。
治りにくい傷口が、病原菌がたくさんいる歯周病の病巣に常にさらされてしまいます。
絶え間なく傷口から侵入してくる病原菌に身体の免疫が追いつかず、
やがて病原菌は血流に乗って全身に巡り、お口とは離れた場所にある組織にまで到達します。
図2.歯周病の病原菌が体内に侵入し、全身の組織に到達するイメージ。
お口の中の傷は再発率が高く傷口の病原の菌濃度も高いため、免疫の働きが追い付かなくなる。
各組織が病原菌によって直接疾患になったり、体の免疫が弱って他の疾患を誘発しやすくなる。
常に病原菌にさらされることで体内の組織が疲れてしまい、他の病気を誘発してしまうと言われています。
例えば、血管の壁に病原菌が入り込むと、動脈硬化や血栓が生じる可能性があります。
肝臓に病原菌がたどり着くと、糖尿病などを誘発するかもしれません。
血液は全身に巡っているので、その血液に病原菌が流れ込むと、
さまざまな疾患を引き起こすおそれがあるのです。
著者について