菌とウイルスの違いと病原性 第一章~菌とウイルスの違い~2019.11.21
寒くなり、風邪を引きやすい季節になってきましたね。
喉の痛みや鼻水、発熱に倦怠感など、様々なつらい症状が現れます。
しかしその症状を引き起こす「原因」は分からないまま回復してしまうことが多いはず。ほとんどの場合は「菌」か「ウイルス」に感染してしまい症状が現れるのですが、その2つの違いはご存知ですか?
今回から三章にわたり、「菌とウイルスの違いと病原性」について解説していきます。
- ・第一章 菌とウイルスの違い
- ・第二章 菌の病原性
- ・第三章 ウイルスの病原性
今回のテーマは「菌とウイルスの違い」です。
菌とウイルスは同じ仲間?
「菌」も「ウイルス」も、どちらも感染症を引き起こす微生物で、ヒトの目には見えません。
似たようなイメージはありますが、生物としては大きく異なります。
一番の大きな違いは、増え方の違いです。
菌は、水分、温度、栄養(蛋白質汚れなど)が揃った快適な場所で放っておくと勝手に増えてしまいますが、ウイルスは他の生物の細胞内に入り込まなければ増えることはできません。
生物としての特徴
菌とウイルスの生物としての特徴を詳しく見てみましょう。
菌とは
特徴
菌は一つの細胞でできており、分裂をしながら数を増やしていくことができます。鞭毛を使って自由に動くものもいます。
病気になるメカニズム
菌が増え続けることで人体の防御機構に打ち勝ってしまうため病気になります。また、人体に有害な毒素や酵素といった物質を生成しその作用により組織内での感染の拡大を速めます。
治療法
細菌の感染症治療には「抗菌薬(抗生剤、抗生物質)」が有効です。抗菌薬は細菌の細胞構造を壊したり、増殖する仕組みを妨害したりすることで効果を発揮します。
ウイルスとは
特徴
ウイルスは細胞を持っておらず、自分だけでは増えることはできません。その代わりに他の生き物の細胞に潜り込み、機能を乗っ取って増殖(自分をコピー)します。
病気になるメカニズム
細胞の破壊、変質、失活により身体の機能がうまく働かなくなり、病気になります。HIVのように免疫機能そのものに影響が出るものもあります。
治療法
菌とは大きさや仕組みが異なるため「抗菌薬」が効きません。インフルエンザに効く「タミフル」などの「抗ウイルス薬」もありますが、開発が難しくまだ少数しかありません。
ウイルスは脂質性の膜(エンベロープ)を持っているかどうかの違いで、大きくノンエンベロープウイルスとエンベロープウイルスに分けることが出来ます。
ウイルスによってアルコールが効く/効かないの差があるのは、この仕組みの違いによるためです。
第三章で詳しくご紹介します。
菌とウイルスの共通点と違い
生物としての特徴を見ると、それぞれのメカニズムやライフサイクルが全く違うことがわかりますね。
続いて、両者の共通点と違いを比較してみましょう!
大きさ

大きさ
どちらもヒトの目には見えないほど小さなものですが、両者の大きさはかなり違います。
ウイルスを人間ほどの大きさとすると、細菌は大型ショッピングモールやタワーマンションくらいの大きさになります。
菌:1µm~10µm
ウイルス:0.02µm~0.1µm
形態
形態
菌は細胞壁、細胞膜、細胞質、核など細胞構造を有しており、我々ヒトと同じようにひとつの「細胞」でできています。
それに対しウイルスは遺伝情報である核酸(DNA又はRNA)を蛋白質で出来た殻に包んだ構造をしています。一部のウイルスはさらに脂質でできた膜(エンベロープ)で包んだ作りになっています。
菌:1つの細胞からなる
ウイルス:核酸(DNAやRNA)を蛋白質等の膜で覆っている

増え方

増え方
細菌は「水分」「温度」「栄養(蛋白質汚れなど)」が揃った環境があれば自分だけで増えていくことができます。
一方、ウイルスは自分だけでは増えることができません。他の生き物の細胞に潜り込み、機能を乗っ取らなければ増殖(自分をコピー)することができないのです。
菌:細胞分裂
ウイルス:細胞に感染して自分をコピー
病原性
病原性
病原性とは、菌やウイルスなどの病原体が、他の生物に感染して宿主に感染症を起こす性質・能力のことです。それぞれの増え方の違いが病原性の違いとなって現れます。
菌:毒素の生産
ウイルス:細胞の破壊、変質、失活

主な病気

主な病気
いわゆる風邪の原因は、ウイルスが90%、残りの10%が細菌によるものです。
初期症状は似たような症状が現れることがあり、病院などで検査しないと病原体を特定できないことがあります。
菌:食中毒、水虫
ウイルス:風邪、食中毒、肝炎、HIV
| 菌 | ウイルス |
大きさ | 1µm~10µm | 0.02µm~0.1µm |
形態 | 1つの細胞からなる | 核酸(DNAやRNA)を蛋白質等の膜で覆っている |
増殖 | 細胞分裂 | 細胞に感染して複製 |
病原性 | 毒素の生産 | 標的の細胞の破壊、変質、失活 |
主な病気 | 食中毒、水虫 | 風邪、食中毒、肝炎、HIV |
まとめ
似たようで全く違う、菌とウイルスの特徴がおわかりいただけたでしょうか?
両者の共通点は、生物の設計図となる遺伝子(DNRやRNA)を持っていることと、マスクや手洗いである程度、感染を防げることです。
第二章では「菌の病原性」について詳しく解説します。
食中毒や水虫など、我々ヒトにとって非常に身近な存在です。
お楽しみに!