前回の第一章では「匂い・香りとは?」というテーマで、匂いの正体に迫りました。
第二章の今回は、いよいよ「雑菌が関係するニオイ」についてです。
私たちの生活の中ではあらゆるところで、「不快な臭い」が発生することがあります。
トイレ、浴室、生乾きの洗濯物、靴、汗、加齢臭…
一見、それぞれ関連なさそうですが、共通しているのは、雑菌が臭いを発生させているということです。
雑菌は自分たちの繁栄のため、エサを食べ、増殖していきます。
その過程で、栄養となる物質を分解します。
私たちはその分解された状態を「腐っている」と言っています。
雑菌たちはその過程でガスを生産します。
これらのガスの臭いに対し、ヒトの嗅覚は敏感に反応を示します。
家の中にはどのような臭いやその原因があるでしょうか。
身の回りの気になる悪臭について、探っていきましょう。
トイレに入ると鼻につくツンとした刺激臭。
その臭いの主な原因はアンモニアです。
アンモニアは体内でタンパク質が分解されることで生じる物質ですが、腎臓で無害な尿素に作り変えられ排出されるため、排尿直後の尿にはほとんど臭いがありません。
ところが排泄後は細菌によって尿素が分解されて再びアンモニアになり、強い臭いを放つようになります。
尿が飛び散らないように座ってからの排尿と、こまめな掃除を心がけましょう。
浴室は温度・湿度が高く、構造が複雑で掃除が行き届かないことが多い場所です。常に水分があり、皮脂汚れや石鹸カスといった栄養分も豊富。
天井や壁を覆う黒カビや、ヌメリの主な原因であるピンクカビを始め、雑菌やカビの温床になりやすい場所です。
すぐ近くに排水口があるため、ドブのような臭いも感じることもあります。
入浴後は壁の水滴を拭き取り、なるだけ室内を乾燥させることが肝心です。もちろん、排水口はこまめな掃除を。
室内干しをすると気になる生乾きの臭い。
服を濡れたまま放置すると、洗濯で落としきれなかった汗や皮脂に含まれているタンパク質を雑菌が分解し、臭いが発生します。
雑菌の増殖を繰り返すと大事な服に臭いが染みついてしまうことに。
扇風機などを併用し、雑菌が増えないうちに素早く乾かすようにしましょう。
夏場に特に気になる体臭にも雑菌が関係しています。
実は、出たばかりの汗は無臭です。
「汗臭さ」の原因は、皮膚にいる常在菌が汗や皮脂、皮膚の汚れをエサに繁殖し、酸化・分解を起こすためです。
また、汗腺の濾過機能が低下すると、余計なミネラル分が汗に含まれて流れ出してしまい、常在菌のエサが増え、臭いが強くなってしまいます。
汗腺の濾過機能は、汗をかけばかくほど高まるという特性があります。
日々適度に運動し、汗をかいたら早めに濡れタオルで拭き取るようにしましょう。
雑菌は高温多湿の状態を好みます。
通気性が悪く蒸れやすい靴は雑菌にとって絶好の環境です。
足は構造上、皮脂、角質が溜まりやすく、雑菌のエサも豊富。
皮膚常在菌がそれらを分解して「酢酸」や「イソ吉草酸(イソキッソウサン)」が生成されると、納豆のような強烈な足の裏のニオイとなります。
1日靴を履いたら2日は休ませ、雑菌が増殖しないようにしましょう
加齢にともなって分泌する皮脂の成分が変わり、皮脂が酸化した過酸化脂質が増えます。
これらが皮膚常在菌の作用によって酸化・分解されてできる物質の一つが『ノネナール』で、これが加齢臭の原因です。
染みついた汚れや臭いが洗濯ではなかなか取れなくなってきたら、思い切ってシャツや靴下、枕カバーを買い替えてしまうのも一つの手です。
身の回りの匂いは、雑菌と切っても切り離せない関係にあります。
いずれもこまめな掃除やケアで、雑菌を増やさないことが大切になってきます。
最終章の第三章「ニオイへの対策編」では、
消臭の方法や、そもそも匂いを発生させない方法についてご紹介します。
お楽しみに!
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